コーヒー後発国の利
更新に間が空いてしまった。 “The Story of Stuff” の字幕と資料翻訳が終了し、制作会社に納品したばかりである。素人仕事なので 視聴者の方には観にくい作品になってしまっているかもしれないことをまずはお詫び申し上げたい。字幕で対応しきれなかった詳細な内容は資料を参照していただきたい。
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さて先日までネパールに行っていた。滞在中、JICAが技術支援に関わっていたというエベレストコーヒー事務所を訪れ、開拓中のコーヒー市場について話を聞く機会があった。なかなか興味深い話だったので概要を紹介したい。
ネパールにおけるコーヒー生産の歴史は浅い。栽培が始まったのはほんの30年前。輸出の本格化はほんの5年前である。ネパールは、生産性に乏しい山岳地帯の土壌に商品作物を栽培することで、国の新たな農業開拓、農村の貧困緩和、土壌侵食の防止と、生態系の多様化を図ってきた。そして今、オーガニック、フェアトレードという付加価値がネパール産コーヒーの追い風となっている。
コーヒー栽培の舞台は、都市の大気汚染から遠い場所に位置したヒマラヤ山系。雨季と乾季があり、霜がつかない標高600~1500メートルの地域で繰り広げられる(高地栽培)。樹はアラビカ種で、パパイヤやナッツ、オレンジなどの木と間作することで日陰栽培が実現し、鳥の生息環境が生まれる。貧しく自給自足に頼っていた零細農家が栽培を行うため、高価な農薬や化学肥料が使われることもない(無農薬)。さらに栽培指導が国内の生産者組合を通じて行われ、また海外NGOや政府団体の技術援助のバックアップにより、貧困緩和策としてのコーヒー栽培体制が維持されている(フェアトレード)、というわけだ。
なんだかできすぎた話ではないか。
いや、そうでもない。コーヒー栽培はこれが本来の姿であるべきなのだ。
さえぎる樹木を取り除き、日当たりをよくした農園(プランテーション)に植えられたコーヒーの樹は、日陰栽培よりも成長スピードも収穫量も上がる。安い労働力と農薬、化学肥料を投入してコーヒー単作を促進することにより、国際競争力は上がるかもしれないが、一方で労働の搾取と、土地の疲弊が進む。豆の価格は生産者とは無関係にニューヨークやロンドンの商品取引所で決定される。
コーヒーの国際市場はこうして不公正な搾取の構造へと変貌を遂げてきた。
この実態は、映画『おいしいコーヒーの真実』が如実に暴いている。
ネパールコーヒーの主な輸出先は日本だが、最近ではUSAID(米国国際開発庁)の官民コーヒー生産者支援プロジェクトを通じて、アメリカでも民間企業の取引が増えているという。スターバックスなど巨大企業に豆を卸すアメリカのHolland Coffee社はネパール豆を高く評価し、「一定条件」のもと、「プレミアム価格」での大量購入を約束している。
コーヒーマーケットに遅れて参入したネパール。世界コーヒー市場の失敗と反省を土台に、持続可能な農業と開発を支持する消費者の需要獲得を期待したい。
